デザインがつくる風景
僕が自分の中で風景という言葉を使うのは、83年~85年にかけての東京。日産Be-1の開発に携わっていた時期。風景のなかにある車ということを考えた。当時は四角い車しかなかった。その風景を変えてみたいと思った。日産Be-1以降、世界中の車の形は丸くなっていった。そういうことが世界中の風景を変えることにつながるとしたら、デザインってなかなか面白いもんだなと思った。
一方で、原風景という言い方があって、自分自身が幼い時にみた日本。うつろいながら、おぼろげながら、自分の記憶のなかにある風景。ただそれはどちらかというとエラくデザインされていて、その原風景は多分リアルな風景とは違う。心のなかで見ている風景で、心象風景という言葉があるけれども、そういうものってとても意味があるというか。
東北が昔の風景をそのまま取り戻すのもよいかもしれないけれども、再構成するというか、僕がやったレトロデザインというのは、昔のものをそのままもってくるのではなくて、古いものと未来を混ぜ合わせるような感覚。古い東北と未来の東北が混じり合った、再構成された風景っていうものを僕は見てみたい。
坂井直樹
コンセプター /ウォーターデザイン代表取締役/成蹊大学客員教授
サンフランシスコでTattoo Companyを設立し、刺青プリントTシャツ販売。帰国後はテキスタイルデザイナーとして活躍後、日産「Be-1」の開発に関わり、フューチャーレトロブームを創出。